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リゾート アーカイブ

変質する不動産業

リゾート開発は、疲弊した地方の地域振興策のきめ手だと言われています。

また、東京と地方の格差是正、国土の均衡ある発展のための国土政策であるとも言われていますね。

都市と農村の人間らしい交流の中から、21世紀にむけて、地方に定住できる饗をつくるための国策だと理解されているからこそ、農民の営農意志を断念させてまで、自治体が協力しているわけです。

しかし今、地方では黒い疑念が農民たちの間で急速に広がっています。

ある関東の市長が老人ホーム建設のためにといって集めた土地が、気がつくとゴルフ場に化けていました。

また、ある県では、役場がゴルフ場開発業者の業務を代行し、職員なのか業者なのか判別できない状況だと聞きます。

変質する不動産業 その2

わたしは報道関係者や地方議会の議員、ゴルフ場建設反対運動の方々から、全国各地の切迫した、奇妙な話をよく聞かされます。

どこの話も似ていて、まず保守系代議士がバックにいて、地元有力者と行政がモノを言わせない雰囲気の中で

「土地を売れ」

「もう農業は駄目だ」

「正直者が馬鹿をみる現実をよく見よ」

「お前も少し賢くなれ」

云々と攻めたてるのです。

ほとんどステレオ・タイプ化した話ばかり。

過疎地再建に持ち込まれるビッグ・プロジェクの本当のスポンサーは見えないまま、土地ブローカーが暗躍し、契約段階ではじめて買い手が東京の地上げ紛争で全国的に名前が知られた地上げ業者であることが判明したりなど・・・

複雑で怪異な世界なのです。

男のだいご味?

89年末に首都圏リゾートの調査を行ないました。

各地で超一流企業群が、リゾート法による上人を前に、"リゾートっぽい"企画書をもとに、なりふりかまわず土地買いに狂奔した跡をあちこちで見聞しました。

銀行系の金融機関も、ダミー会社を通じてかなり乱暴な挙に出ていました。

土地ころがしほど面白く稼げる商売はないだろうし、欧米なら「経済犯罪」とみなされることでも、わが国では「男のだいご味」のビジネスなのだからどうにもなりませんね。

ところによってはお役人の手も、かなり汚されていることも知らされました。

首都圏の土地狂いの激烈さに比べたら、九州や北海道のリゾートの地上げ戦争は、のんびりとした牧歌的なものに思われるから不思議です。

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リゾート開発のビジネスの仕掛け

不動産業のしにせのご主人が、こんなことを言って嘆いていました。

「もうわしらの出番はない。

怖いもん知らずの若い業者でないと、とても手が出せん」

ことは首都圏だけではない、地方の大都市も同様なのです。

「今マイホームを買おうと捜しているが、福岡では東京の業者間で土地のころがし売買が激増して、地元では業者すら取り扱い物件がなくて困っている」と福岡の友人は言っていました。

リゾート開発は単位面積が大きいので、ビジネスの仕掛けも大がかりかつ複雑であり、資金量もとりわけ大きいもです。

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加速度がつく投資熱

通産省の外部団体である余暇開発センターがまとめた、1989年2月のリゾート投資額予測を見てみました。

それによれば、リゾート法関連でのリゾート投資は、既知の府県データからみて、1県の平均規模は2500億円であり、それに47をかけると、リゾートへの直接の投資だけで12兆円弱だと想定されています。

しかし、1年たって、全国のリゾート投資予測総額はどんどん水増しされているのです。

余暇開発センターの少しは抑制された投資予測値レベルですら、宿泊施設についてはすでに供給過剰は明らかで、経営上の危険性への警戒信号が点滅していました。

しかしながら、同センターのレポートでは、ゴルフ場の将来市場予測については、2000年に2800ヶ所の需要量があるので、あお1300ヶ所は必要とされていました。

この数字に元気づけられたわけではないでしょうが、89年末まで、ゴルフ場計画は5~600ヶ所とされていたのに、年を越すと、1500~2000もの申請ラッシュが見込まれる過熱状態になったのです。

ゴルフ会員権が高騰し、投機目的の会員権需要が激増したためです。

リゾート・マンションのブーム

リゾート・マンションが未曾有の売れゆきを示し、これが首都圏に近いリゾート地の地価を引きあげました。

19889年に全国で発売されたリゾート・マンションの戸数は過去最高の1万2583戸。

88年実績(1万1564戸)比8.8%増でした。

県別では、熱海や伊豆半島などリゾート地の多い静岡県が同74%増の3184でトップ。

湯沢町、塩沢町などのある新潟県のほか、山梨県、神奈川県、群馬県の5県で1000戸以上供給されました。

89年発売されたリゾート・マンションの年末時点の契約率は平均で86.8%で、「2、3ヵ月かければ、ほぼ完売する状態」といいます。

90年はさらにふえ、1万4000~1万6000戸の発売が見込まれていました。

平均単価は3922万円で前年の2854万円に比べて37%もの大幅アップとなりました。

88年上期と89年上期とをくらべると、建設戸数が倍増するとともに価格の急激な高騰がみてとれます。

1億円以上のマンションが6戸から一足とびに269戸となり、8000万から1億円のそれも13戸から139戸にふえています。

月額50~80万円もの管理費を要するグレードの高い物件は希少性をかわれ、投機的な発想からコスト計算抜きで資産家や企業に結構売れるのです。

熱海では日本庭園と茶室を備えた3億4000万円のマンションが売れました。

箱根の強羅では建築規制の厳しさを売り物にして、「これが最後」をキャッチ・フレーズに、22棟ものマンションが建築されていました。

即日完売が多く、私が訪れたモデル・ルームの売却物件想には、売却済みの赤いバラがぎっしり飾られ、商談中の黄色いバラがポツポツと隙間をうめていました。

商談は即決が多く、金余りを実感させられました。

加速度がつく投資熱 その2

89年上期には、3000万円までの「安い」物件が全体の43.8%を占めていましたが、こうした物件はマイホーム断念派向きです。

同年の首都圏のマンション分譲価格が平均5411万円(東京都区部、8125万円)と比べると格安に思われ、結構売れるわけです。

89年にマンション・ブームは沖縄へも飛び火。

都市計画を持たない恩納村で、沖縄初の本格派マンションン154戸が発売されるやすぐさま売れたのです。

買ったのはほとんど東京の人でした。

マンションの建設ブームは恩納村でも地価上昇に結びつき、地価の平均上昇率は宅地で10.6%(前年1.9%)と県内最高でした。

地価水準はムーン・ビーチ周辺で坪90万円、一般国道沿い30万円と那覇市内なみになり、しかも周辺民家は日照等で被害をこうむるなど弊害も顕在化しつつあります。

また、新幹線通勤向けのリゾート・マンションも沼津市や高崎市や熊谷市など東京都心から100キロ圏で目立ちはじめました。

マンションについて

リゾート・マンション問題という点では、新潟県湯沢町が有名です。

東京から167キロの同町に上越新幹線や関越自動車道が開通したのが1985年で、この頃から急速な建設ブームがやってきました。

89年末までに5036戸が建設され、93年までに計63棟1万5552戸。

東京の業者が建て、東京の人が買っています。

販売広告も東京でだけ出廻るし、地元信用機関を通じる住宅ローンの利用もありません。

町の不動産業者さえほとんど出番がなかったのです。

まさに、TOKYOがやってきて、人口1万人弱の温泉町はTOKYOに飲み込まれてしまったのです。

人は「東京都湯沢町」と呼びます。

建設が特に集中した岩原地区では、地価が86年の坪15万円から3年間で10倍にも跳ね上がりました。

地価上昇に伴って固定資産税額も88年には3億2000万円に急上昇しましたが、この程度では上下水道や道路・公園等の整備と消防・ゴミ処理に追いまわされる町財政負担の間尺に合いません。

建設課長が収賄で逮捕され、町長も退陣するなど、町民はあっという間の暗転に頭を抱えているのです。

若い人はマイホームを求めて隣町に移住し、古くからの民宿・旅館は閉じ、町の誘致企業さえ高値で土地を売却して撤退してしまいました。

ほとんどガランとした、夜も点々としか灯がつかないゴースト・マンションは、窓を開けると隣の窓といった有様で、買った人も価格上昇の思惑が外れて思案している状況なのです。

東京マネーが新幹線に乗ってやってきて、しこたま殖やしたマネーが再び東京に回収されました。

あとには、キツネにつままれた顔の地元と購入者が取り残されたのです。

地域の期待と現実

地方で熱気をおびるフィーバーぶりは、リゾート企業が来てくれたら過疎化した町や村に賑わいがもどるだろうという、極めて素朴であるだけに、それだけ切ない願望を反映しています。

相場をはるかに割る安値で、しかも100ヘクタール単位の土地をとりまとめて売る自治体職員の超人的頑張りは、もはや「リゾートしかない」という、切迫し思いつめた末のことなのです。

これが最後の地域振興策であるという思い込みからも生じています。

今、地方ではリゾート開発は神聖な公共事業であり、地域再生の最後の切り札と目されています。

90年2月に、熊本県中央町でおきたこんな事件が報道されました。

建設予定のゴルフ場げによって飲用水および農業用水が汚染され、健康や農産物販売に重大な影響を及ぼすという懸念から、関連集落の町議2人が、町議会のゴルフ場誘致決議に反して自分たちの土地を売らないしと言ってきたのです。

この勇気ある(田舎ではよほどの覚悟が要る)発言を町当局や町内世論が許さず、結局町の振興に異をとなえるとは町会議員にあるまじき態度となじられ、責任をとらされて2人は辞表を出したというものです。

最近は安全性と嗜好性によって、地域作物のブランド化傾向が強く、中央町でも農家はブランド化対応に取り組んでいます。

ゴルフ場の建設のためにムラの米や野菜のブランド・イメージがこわれるとすれば、一考が必要でしょう。

地域の期待と現実 その2

リゾート開発は、地域経済への波及効果があるとされています。

第一建設段階で建設・土木産業が活況を呈します。

また、営業開始後の運営段階で、現地でのリゾート消費拡大による地域産業の振興、雇用・所得効果、税収効果の相互作用によって地域経済循環が高まるというわけです。

ある県での試算によれば、第一段階でリゾート開発の総投資額の1.85倍の生産が誘発され、また第二段階で、総投資額の0.4倍のリゾート消費が毎年地元に発生するということです。

まさに夢のような波及効果・・・。

もしその通りなら、どこのリゾート地も極めつきのバラ色の未来を期待できます。

しかし、続々と誕生しているリゾートのなかで、どこに行けばそのような輝くばかりの実績がみられるでしょうか。

建設段階で地元土建業の仕事は手間請けだけです。

完成でれたリゾート施設の運営段階では、地元企業はそれほど収益性が良くない部門を受け持たされているというのが現実です。

顕著な雇用効果を認められるのが、ゴルフ場のキャディーかローン・キーパーにボーイ、ウェイトレスなど。

所得効果があるといっても、リゾート建設による地価上昇による資産効果が進出企業にすべて渡っていくのを、元地主はどう感じているのか、考えて欲しいのです。

また役場への税収効果がありますが、企業誘致のための公共投資の債務償還の他に陥穽も待っています。

固定資産税がふえて役場の財政が豊かになったからという理由で、国からの交付税が増収分の75%差し引かれるのです。

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